文章は書かなくなると書けなくなる。手書きの字もしかり。だからといって、手書きでお届けするのは難しいので、手紙を書くような気持ちでこのコラムを書くことに決めました。私の「本っていいなぁ」という気持ちが、誰かのちいさな気づきや幸せにつながりますように。そう願いながら綴ります。
こんにちは。ブルーシープという出版社で書籍の仕事をしています。聞いたことがない出版社だなと思った方、はじめまして。2015年のひつじ年に生まれ、昨年10周年。展覧会の図録やアートブック、絵本を年に10冊ほど出しています。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんがブルーシープは展覧会の企画会社でもあり、東京・立川の美術館【PLAY! MUSEUM】で開催している展覧会をすべて企画しています。ここがほかの出版社とはちょっと違う点でしょうか。
そして、珍しい点は社内に編集者がいないということ。他の出版社の方に話すとたいてい「え?」と驚かれます。一般的な出版社では、編集者が本づくりを担っているからです。では、ブルーシープはどうしているか。外部の編集の方を中心に、展覧会の企画担当者たちが補佐として関わっています。
名刺に書籍担当と書いてある私が関わるのは、本ができあがる手前くらいから。本を読者であるみなさんに届ける部分の仕事をしているので、書籍の流通担当と自己紹介する方がわかりやすいかもしれません。
いろいろな会社のたくさんの人の手を経て、本ができあがり、運ばれ、読者に届く。
世の中のあらゆるものがこうして最終ユーザーに届くわけですが、自分は何を届けるかというところで、職業が決まってくると思います。大好きな「本」に関わることができているという日々に、やわらかな幸せを感じながら働いています。もちろん、忙しさに疲れたり、自分の力不足に落ちこむこともあります。でも、できあがった本を書店で見かけ、ここから誰かの手に渡っていくのだと思うと、本当に嬉しくなります。
さて、前置きが長くなりました。
みなさんは、書店に行くと必ず寄るコーナーはありますか? どのジャンルから本を見ていきますか? 目的のものが決まっていて、一直線に向かうタイプでしょうか。
私はというと、だいたい入口すぐの話題書コーナーで最近の新刊と雑誌をざーっと見ます。今はこんなビジネス書が売れているのか、気になっている作家さんの新刊出たなとか、本の表紙やPOP(本の紹介をするコメント)を見ながら一周して、いざ目的地へ。
文芸書・文庫コーナーに着きました。読みたい本をじっくり探します。まだ読んでいない本が家にあるのに、面白そうな本はないかしらと探してしまいます。気分によって読みたい本が変わるので、買った時と読みたい時が一致しないこともあったり。単行本を買ったのに読みどきを逃して、文庫本が発売されていることもちょくちょく。しかも、その文庫本の発売を書店の店頭で知り、単行本を持っていることを思い出し、いそいそと読み始めるタイプです。
読みたい本が見つかったら、ブルーシープの本があったらいいなぁとアート書を眺めに行き、最後に児童書へ向かいます。ここがまた長いのです。絵本が好きなので、気になる本があるとつい手にとって読んでしまいます。
この絵本知らないな、新刊かなと奥付(本の最後に記載してある書誌情報のこと)を見たりしながら。そうこうするうちに自社本に関連する棚にたどりつき、じっと見ては「エルマーのぼうけん」や「がまくんとかえるくん」シリーズの横にうちの図録を1冊でいいから忍ばせたいとか、junaidaさんの絵本が集められているところに『ここはおうち』を差したい(「差し」とは、背表紙を見せて陳列すること)とか、自社本が一緒に並んでいる様子を脳内妄想するのがルーティンです。多分、どの出版社の方も同じような妄想をしている筈……
いつもは児童書で書店探検を終えてレジへ向かうのですが、たまに違うコーナーへ行くことも。仕事で悩んでいたら、話し方の本や資格書を眺めたり、親の家の片づけをうまく誘導したいと(この気持ちがよくないかも)実用書で知恵をつけようと考えたり、石井ゆかりさんの占い本、そろそろ出ているかもと探したり。
その時の自分の気持ちや境遇で、書店で手にとる本がどんどん変わります。しかも、その場所めがけてというより、歩いて本を見ていると自分の気になるワードが目に飛び込んできて、思わず足を止め手にとる感じです。
みなさんもそんな経験ありませんか?
書店へ行ったら、いつもと違うルートで歩いてみると、新しい本との出会いがあるかもしれません。ぜひ、試してみてください。
ちなみに実家の片づけは、写真でわかる片づけ本や片づけ小説などいろいろ試しましたが今のところ撃沈。コミックエッセイだったら、漫画好きな母も読んでくれるかも。私もまた書店探検に行ってきます!
『たいせつなこと』 マーガレット・ワイズ・ブラウン/さく レナード・ワイスガード/え うちだややこ/やく フレーベル館
スプーンにとって大切なのは、使うと上手に食べられるということ。ひなぎくは白くあること。空は? りんごは? と問いと答えが交互に紹介されます。そして、最後にあなたが登場。23歳の時に大人も絵本を楽しめるんだと気づいた1冊。
『あなたの人生、片づけます』 垣谷美雨/著 双葉社
片づけ屋・大庭十萬里は「部屋を片づけられない人間は、心に問題がある」と様々な人の家を片づけていきます。片づけられない原因は人それぞれ。これまでの生き方や考え方とこれからに目を向けないと、片づけは進まない。母に渡したら娘ファーストと言われ、私と妹だけ読んだ小説。
『がまくんとかえるくんができるまで アーノルド・ローベルの全仕事』 岡本梓(市立伊丹ミュージアム)・永岡綾/文 ブルーシープ
がまくんとかえるくんのお話は、小学校の教科書で読んだ方も多いでしょう。お話を作ったローベルは、どこからこの物語を思いつき、どんな仕事をし、どんな考えをしていたのか。ローベルの仕事と生き方がこの1冊に凝縮。脳内妄想で棚に並べてしまう図録。